睡眠は子供に”タダ”でできる教育

2017年12月13日更新

お子さんをお持ちの親御さんたちへ。睡眠時間を削らせて、塾・習い事を詰め込んで、「十分な教育」を提供していると自己満足していませんか? 子供たちにできる一番の教育は、まちがいなく「睡眠」です。

睡眠は子供に”タダ”でできる教育

睡眠は子供に”タダ”でできる教育

 

現在、日本の子供の夜型化が深刻です。

夜10時以降に起きている3歳児の割合は、1980年代は20%だったのに対し、2000年代にはその2.5倍、50%にも上っています。

夜遅くにコンビニやファミリーレストラン、ましてや居酒屋にまで子供と出かけている光景をよく目にします。子供とのコミュニケーションという目的もあるのでしょうが、あまり褒められたものではありません。

子供には大人以上に、夜の睡眠が重要です。たっぷりと眠ることが成長・発達への、一番の特効薬なのです。「寝る子は育つ」は医学的にも正論で、そのことを知らない大人(なんと医師でさえも)がとても多いのが現状です。

 

睡眠の役割

 

たかが睡眠と軽視していませんか。睡眠には、「脳の休息」「体の休息」「心の休息」といった役割があります。さらに、子供には、大人以上に睡眠中にたくさんの成長ホルモンが分泌されます。

骨や筋肉を発達させる成長ホルモンは深い睡眠に一致して分泌されるため、深い睡眠が得られる午後9時頃から午前4時頃までに何時間寝られるか、で分泌量が決まります。いわゆる睡眠のゴールデンタイムです。同じ睡眠時間でも、夜の9時に寝るのか、12時に寝るのかでは、明らかに早く眠る方が睡眠の質も良いのです。

 

また、学力についても睡眠と深い関りがあります。起きている時に学習したことが睡眠中に脳に記憶されます。

小学校に上がるまでに、就寝時刻が21時以降あるいは不規則である子供は、小学校入学時の成績が悪いというデータもあります

また、睡眠不足は脳の「思考力」「集中力」「感情のコントロール」などをつかさどる、前頭前野という部分の機能低下を招きます。つまり、イライラやキレやすさといった傾向を生んでしまいます。

睡眠時間が足りないと、脳の発達に影響し、情緒不安定や学力低下を生じさせてしまうのです。

 

たっぷり眠らせることも教育

 

お子さんは習い事をいくつかけ持ちしていますか。子供にたくさんのことを経験させたい、と考えて、習い事や塾を詰め込んでいるご家庭も多いと思います。ですが、それによって帰宅時刻が遅くなり、眠る時間が削られるのは考えものです。

睡眠時間を多くとることは「頭がよくなる」「体が成長する」ことに繋がるといえます。また、睡眠中は脳が休まりますので、思考力や集中力の向上や心の落ち着きに効果があります。さらに、新陳代謝も活発になり「肥満を防ぐ」「肌も綺麗になる」など、良いことだらけです。

早く寝かせることには、お金もかかりませんし、まさに“タダ”でできる子供への教育ではないでしょうか。もっと、親御さんたちに知ってほしいと思っています。

 

この記事の監修

内村先生

内村 直尚(うちむら なおひさ) 先生

久留米大学医学部長

国内トップレベルの睡眠研究チームを率いる睡眠障害のエキスパート。睡眠障害の研究に加え、統合失調症やPTSD、うつ病などの精神疾患に伴う睡眠障害についての検討も行い、臨床、研究の両面で高いレベルの医師の育成にも注力している。